2020年07月11日

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

映画「Greyhound グレイハウンド」を見ました。
原作「The Good Shepherd ~駆逐艦キーリング」トム。ハンクス主演。

以下感想その他です。
※ネタバレ含みます。 楽しみにしたい方は読まないで下さい。
読んで楽しみが減ったと怒ってもしりませんw

一部追記しました。













映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。



まず、冒頭ローズベルトとチャーチルの演説から始まる物語は、大西洋の船団護衛を端的に説明します。
そしてお決まり(?)の内地でのシーンはあっさり。
荒れる北大西洋。 守るべきコンボイ(船団)
米英加合同の護衛駆逐艦達!
そして襲い掛かる狼群との手に汗握る攻防。



と、このあたりは個人的にはどうでも良いですw


以下、オモテの感想。

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

シーン、シーンはワッチ(当直)時間ごとに区切られて編集されており、時間の感覚がまさに乗員と一体化する感が凄く良い。
そしてどのワッチでもトムハンクス演じる艦長が常に艦橋に居るあたり、まさに「Always on the deck」。
しかしながら艦橋に居るとはいえ、常に艦長が指揮を執っているわけではなく、きちんと当直士官に預け、戦闘が生起した瞬間に「舵を取る」描写が細かい。
もちろん「舵を取る」と言ってもハーロックのように自ら舵輪を回すわけではないですよ。
「I have the Conn」 ~私が操艦を執る
きちんと宣言し、矢継早に操艦号令をかけるのは圧巻です。 字幕追いつかないw

なお、CiC-Combat Information Centerを「Combat」と略すのは現代ではありませんが、CCiC設立当時は普通にあったようです。
他に「PlotRoom」や「Radar」と言う呼び方も当時の事を記した本で見受けられます。

この作品、ほとんどのシーンは艦橋内とその外に出たウィングだけで描かれているんですが、入れ替わり立ち代わり様々な役職の士官、下士官、兵が艦長に報告、進言または許可を求めてやってきます。 もうすごいリアル。
艦長伝令の使い方も緩急あって面白い。
艦内令達と艦長令達も明確に分けて行っている点も素晴らしい。

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

原作「駆逐艦キーリング ~The Good Shepherd」であった、艦長と部下との心理描写がそれなりに映像化されています。
映画だけを見ると充分と思えますし、エンターティメントとしてはこのくらいが良いのでしょうね。
それなり、と書いたのは原作はもっと人間描写、心理描写が濃厚だからですw
そりゃあの「ホーンブロワー」書いた「セシル・スコット・フォレスター」さんですからねw

しかし文字で書き起こせない分を役者さん達の表情が素晴らしく演じられています。
最初の戦闘に挑む時と、映画の後半での艦橋内の配員達の表情、動作のほんとに微妙な変化。
これは凄いです。

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

乗員達の生活風景などもかなり期待していたんですが、そちらはほぼ無し。
残念ではありますが、これはあくまで艦長視点での物語の為でしょう。
配置に就いている時、または報告等に現れる時しか乗員達を見ることができない。
その中で乗員を掌握し、適切に扱うために苦悩し、苦労しつつも任務達成のために命令を下していく重責。そのあたりが多くを説明せず、映像だけで表現していくのがたまらなく凄いのですよ。
こんなの今の邦画には絶対できません。

艦長の視界外の乗員の描写もほとんど無いですが、他の船団や護衛の艦の乗員もまったくと言って良いほど出てきません。
護衛隊は無線で話す艦長の声のみ。
船団に至っては発光信号のみです。

そして敵であるドイツ潜水艦も外観のみで中はいっさい出ません。
まぁ一人だけお調子者のU-ボート艦長の声だけ何度か聞けますが。

この徹底した視点の固定ぶりは本当に凄いと思いました。

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。


また軍装についてですが、あまり詳しくないので間違ってる可能性もありますが以下の通り。

乗員のデニムワーキングはもちろん、ブルーハットとグレイハットが混ざるのが凄く良い。
デッキジャケットも安易にN-1やN-4は使わず、初期のブルーと試作型が混ざっていたように思います。
(予告でチラっとN-1らしきものが見えてああ、と思ってましたがよく見ると私物の羊毛ジャケットのよう(または古い官給タイプ?)

44年頃(笑)の駆逐艦描写としてすごく良く見えました。
※映画の想定は42年初頭。








でもって、ここからは皆さまお待ちかね(?)のウラの感想です。
この映画最高です! 素晴らしい! ケナす奴は最低や!

って人は読まないで下さい♪




まず。
原作ではマハン級だったキーリングですが、撮影の都合もあってか見事にフレッチャー級へと昇格しています。
※皆さまご存じの通りフレッチャー級は1番艦のフレッチャーでも42年夏頃の就役で、更に数か月は慣熟訓練に従事しますので42年2月の物語に登場するのは不可能なんですね。
Jane見ると劇中キーリングの艦番号であるDD-548は建造キャンセルで欠番になってるんですね。ニクいぜ(どっかの手抜きイージスとエラい違い)。

ついでに余計なウンチクですが「フレッチャー」の艦名は米墨戦争の英雄であるフランク・F・フレッチャー提督にちなんでの物で、有名なフランク・ジャック・フレッチャー提督はその甥にあたります。
ま、時系列考えたら当り前の話ですが。

で、ともかくフレッチャー。
フレッチャー級駆逐艦が全編通じて暴れまわる映画と言うのは本当に見たかったし、すごく良かったですよ、ええ。

しかしフレッチャー。。。おそらくは現存するものを撮影にも使用したのか、ほぼ戦後改造型、しいて言っても大戦後期型ですよね。
※撮影ノートによるとルイジアナで保管されている、キッド (USS Kidd, DD-661)を使用したそうな。
なので装備が完全に1945なんですね。
まぁアドバイザーが「かの」デールダイ事務所らしく、WW2ならokというスタンスでしょうw

映画の中で活躍するSGレーダーと艦橋前面のボフォース40mmがなんとも。。です。
とくにSGレーダーはストーリーの中心に近い所にある上にCiCを活用しての対潜戦はもはや44年後半以降。。。
考えたら原作にもレーダー描写あった気がするけどマハン級よなw

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

CiCや艦橋にあったレーダーレピーターはおそらくSPA-25系列のものに見えるが、このころそんな物は無い。 どの艦艇にどのタイプと言うのはあまり詳しくないですが、駆逐艦等は終戦までTYPE271が主流の筈。
一応PPIスコープではあるもののプロットボードも無ければ、各調節ダイヤルの形状分け(三角とか丸とか)も無かったと思う。
しかし、レーダーレピータの不調(おそらくカーソルが動かなくなった?)で、距離が曖昧にしか読めなくなるの描写は良かった。

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

またCiCの対勢盤作図も、43年初頭以降は作図符号が規定されているにも関わらず、符号を使わずにイメージで書き込んでいるのが残念(いや、42年初頭だからあってる? いや、42年初頭の駆逐艦にCiCもレーダーも無い。。。何書いてんのかわからんようになってきたw)
またグリスペンで雑に書き込んでましたが作図は普通、鉛筆使いますね。
あれでは詳細な計算ができません。
相対運動の計算もですが、少ない情報を作図して相手位置や動静を予察するには最大限精密な作図が必須です。

ディバイダーの持ち方も悪い、と思ったけどそれは当時の米海軍では普通だった可能性もあるので間違いとは言い切れませんが。

そういえば適要記録板をグリスペンで書き込んでたけど、1950年代までは水性ペイントを使ってたはず。

あと、艦長がCiCを呼び出す際に「Combat Conn」と呼んでいるのには少し疑問。
Connは操舵の意味で、艦長が操舵を執る際には使う言葉で「艦橋」と言う意味でも使えるけど、艦長が呼び出す場合は「Combat Captain」または「Combat Co」を使うんじゃないかと思う。



とまぁ、マニアのどうでも良い話はどうでも良いとして。
この映画の一番の問題点は、海洋アクションにある程度割り振ったのは良いとしても戦闘が雑い。

映画「GREYHOUND」を見ました。 ※ネタバレ含みます。 ※一部追記。

真昼間に近距離で次々上がる潜望鏡。
どころか次々と5inch砲積んでる駆逐艦相手に浮上戦闘挑む狼群。

いくら海荒れてるし、FCレーダー無いのでと言ってもですよ。5inch×5門ですよ。 当たるってばw
画面にはFCSも映ってるしなw

船団速力が8ktで、まぁ普通ですよね当時。 
ジグザグ航行での船団移動速力で無いなら、まぁ攻撃後は距離を置いてレーダー覆域圏外から追撃して先回りするならともかく、船団の航跡を続行してるようにしか見えないし。
船団の密集具合から考えると、攻撃位置に付けたならばもっと魚雷撃ちそうなものと思うけど、それほどでもないし。

なんつーか。 FURYっぽかったんすよね。
とにかく観客に1時間半の時間をフルに没入させて、味合わせようと言う感じ。
そしてスピーディでよくわからない過程と、判り易い結果をぶつけてマヒさせる。


一晩経って抱いていた違和感の理由が分かりました。
スピーディな展開、派手なアクション、判り易い結果。
これらすべてが現実の対潜水艦戦に相反するからなんですねw
もちろん戦争と言うものは常に様々な事が現実に起きますし、海洋戦闘、対潜戦であってもドラマティックな展開と言うのは実際にあったことでしょう。
それにしても詰め込み過ぎと言うか。。。まぁエンターティメントなわけですね。
まぁ地味で長くてアクションの無いリアルな対潜戦なんか描いても絶対売れませんよね。
マニアの間で人気なRSBCの「死線の太平洋」にしたところで地味さを描写してはいますが、実にドラマティックに転回するわけですし。
あぁ、でもこの映画を見てから「死線の太平洋」を読むと更に理解も深まるし、光景が浮かびやすくなるでしょうね。


いやいやまてまて。

この映画、ほぼ「死線の大西洋」だよなw
いやいやまてまて、RSBCの方が「The Good Shepherd」を大いに参考にして書かれてると言うべきか。
実際に御大が参考にしたかは判りませんが、おそらくは。

そう言えば距離に関して、やはりkm表記で和訳されていたなぁ。
新版原作もそうらしい(買ったけどまだ未読)
まぁNM(ノーチカルマイル)表記やと普通は距離感覚掴めないやろうから仕方ないか。
私の場合は職業柄(笑)、洋上でkmの方が判り難いけど、そのくらいは生セリフで聞き取れたので良かった。

速力単位がKt(ノット)なので、NMで考えないと相対距離の開きや詰まりが判り難いんですよね。

これは素人予想ですが、おそらく買い取った分をりんごさんは新規加入で回収しきらないんじゃないですかね。
つまり、早期配信は独占しても後に円盤化やCS放映に権利を売って回収に出るかと思うので、それまで待つと言うのも手かと思います。
また、りんご製品をお持ちの方などは7日間無料トライアルで視聴した後、解約と言うのも別にルールに反して無いので構わないかと。 ルールではないが、マナーで言うならこれだけの作品を独占した方に問題があると思うので。
私個人の勝手な言い分ですがw

見て下さる方が居れば、この作品についてお話したい欲は現在MAXですので嬉しいですけどね。

色々とマニアの悪い癖で文句ばっか書きましたが面白いですよ。
少なくとも某サメ映画や、国産の海洋物とはレベルが違います。




スクリーンで見たかったなぁ。。。。ほんと。
りんご、マジむかつく。
ムカつくんで、もう一回見たら無料の間に解約でんな。





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Posted by 先任  at 05:31 │Comments(0)つれづれそのたミリタリ

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